実験ずきで少しオタクで人間っぽい――東南アジアの文学の季節から生まれた衝撃の果実。タイのカリスマクリエイター、プラープダー・ユンによる噂の短編小説12編を収めた、待望の短編小説集です。
著名な父を持つがゆえに「親の七光り」と向き合わざるを得ない複雑な自我を描いた「バーラミー」や、手から紙片が滑り落ちてから、屈んでそれを拾うまでの間の長大な追憶「存在のあり得た可能性」など、その新鮮な構想力と、散弾銃のように続く濃密な言葉の連射は、最近のライトノベルブームとは一線を画す、東南アジアの文学の季節が送り出したニュータイプ文学として愉しんでいただけるはずです。
●東南アジア文学賞受賞作「存在のあり得た可能性」収録
オタク行為によってしか紐帯を確認できないファミリー、乳房と肉まんに同価値を見いだす寡婦、ただ公園を観察し続けるだけの孤高の非行為者……。彼が創造したユーモラスな人物は、どの作品をとってもどこかにタイ的なメンタリティやオポチュニズムを漂わせ、きわめて人間的である。そう、ここにはタイ化されたポストモダン文学の愉しみがいっぱい詰まっているのだ。(訳者あとがきより)
【訳者について】
宇戸清治 Seiji Udo (東京外国語大学教授)
福岡県生まれ。五島美術館学芸員補のかたわら早稲田大学社会科学部卒。76年より4年間、海外技術者研修協会バンコク長期出張員としてタイに滞在。帰国後、東京外国語大学大学院修士課程を経て、86年助手。現在、同大学教授。専攻はタイ文学。主要著書に『タイ文学を味わう』(国際交流基金アジアセンター)『インモラル・アンリアル:現代タイ文学ウィン・リョウワーリン短篇集』(国際言語文化振興財団)『東南アジア文学への招待』(共著・段々社)『デイリー日タイ英・タイ日英辞典』(監修・三省堂)などがある。
【刊行概要】
書名
鏡の中を数える
著者
プラープダー・ユン
訳者
宇戸清治
カバー装画
湯沢 薫
仕様
175×128mm 244ページ/ペーパーバック
税込定価
1,890円
発売日
2007年5月10日
図書コード
ISBN978-4-9903621-0-2 C0097