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「鏡の中を数える」制作に関わった方々の声を順にご紹介します。まず、とても印象的な表紙の絵に注目。この原画はアーティスト、湯沢薫さんの作品です。湯沢さんにお話を伺いました。 |
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最初、「鏡の中を数える」の表紙のお話をいただいた時に、作品を読むよりまず、タイトルでピンと来てOKしたのですが、出来上がった本の中身も自分の絵の世界とぴったりで、すごく嬉しかったですね。
この絵は去年の秋に描いたシリーズの一枚です。何がモチーフということはないのですが、神経を集中して降りてきたイメージがミックスされて定着したものです。きっと自分がいつか見た遠い記憶に影響されているんでしょうね。子どもの頃、お風呂の中に顔を半分入れて息を止める遊びをしていたのを思い出しながら描きました。
私が文学として好きなのは、ポール・オースターやレイモンド・カーヴァー、ミラン・クンデラ、あと幻想文学のタニス・リーなど。去年読んで気に入ったのは、リディア・デイヴィスの「ほとんど記憶のない女」でした。私、好きなものの間口がすごく狭いんです。気に入ると同じものを何十回も読んだりして。でも私、「鏡の中を数える」はすごい好きになりましたね。タイというと、湿度が高くて暑いイメージですよね。でもこの小説の世界はどれも湿気が濃くなくて温度が低い。世界観が洗練されているんですね。
もっと難解なものだと思っていたけど、とても読みやすかった。そして読んでると、プラープダーはきっと音楽が好きなんじゃないかなと思いました。
短編の中で好きなのは、第一話「バーラミー」。本当にこういう感覚に捕らわれた人じゃないと書けない世界だと思います。自分の、見えない部分の肖像画という感じ。2つめの話(「存在のあり得た可能性」)はすごい分かる!と思った。私も古いメモ書きがいっぱい取ってあって、それを時々見つけてハッとさせられますから。
プラープダーは私と同世代ですが、本当に面白い視点を持った人。せっかくこの本で知り合えたので、一緒にまた何か新しいコラボレーションが出来たら、と思っています。(談) |
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■湯沢 薫 (ユザワ カオリ)
18才でスカウトされ、湯沢京名義でファッションモデルとして活動開始。1997年に渡米し、San Francisco
Art Instituteにて写真、映像、本の装丁などを学ぶ。2000年に帰国して以後、映像、平面、音響、立体作品などを用いたインスタレーション作品を国内外の展覧会で発表。雑誌、ファッションブランドや音楽家とのコラボレーション、CDのアートディレクションも手掛けるなど、表現活動は多岐に渡っている。2007年7月、アイルランドのギャラリーで個展を開催。
湯沢さんのホームページは、こちら(http://kaoriyuzawa.x0.com/) |
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